介護の腰痛が限界…国の指針は「抱え上げは原則させない」としています

執筆・編集:東海かいごキャリア編集部|監修:川端 陸渡(キャリアアドバイザー・介護福祉士) | 公開 2026/07/22

介護の腰痛が限界のときに知っておきたいこと
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朝、起き上がるのがつらい。コルセットが手放せない。「介護をしていれば腰は痛くなるもの」——現場ではそう言われがちですが、国の指針はまったく違うことを示しています。この記事では、腰痛が限界に近い方に向けて、制度上の事実と、職場を選び直すときの具体的な基準をお伝えします。

結論:国の指針は「人力による抱え上げは原則行わせない」としています

まず知っておいてほしい事実があります。

厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月改訂)では、腰部に著しく負担がかかる移乗介助等について、リフト等の福祉用具を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱え上げは行わせないとされています。この改訂で、指針の適用範囲は福祉・医療分野の介護・看護作業全般に広げられました。

つまり、「腰は鍛えるもの」「抱えられないのは力不足」という考え方は、国の示す方針とは異なります。抱え上げを前提に業務が組まれている職場は、指針が想定している形になっていない、ということです。

出典:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月改訂)

介護職の腰痛は、業種として突出しています

これは根性の問題ではありません。数字にも表れています。

  • 社会福祉施設や医療保健業を含む保健衛生業の腰痛発生率(死傷年千人率)は0.25で、全業種平均の0.1を大幅に上回ります
  • 職場の腰痛発生件数は昭和53年をピークに長期的には減少したものの、保健衛生業では集計を開始した平成5年以降、増加を続けています。

他の業種で減っているものが、介護・看護の現場では増え続けている。個人ではなく、作業のやり方の問題として扱われるべき数字です。

出典:厚生労働省「腰痛予防対策」

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限界のサインと、受診の目安

次のような状態があるときは、我慢を続けないでください。

  • 痛みで夜中に目が覚める
  • 足のしびれや、力が入りにくい感じがある
  • コルセットなしでは勤務できない状態が続いている
  • 痛み止めを常用している
  • 座っていても、立っていてもつらい
  • 排尿・排便に違和感がある

しびれや脱力、排尿・排便の違和感がある場合は、早めに整形外科を受診してください。これらは、腰の負担だけでは説明できない状態のことがあります。

※この記事は医学的な診断を行うものではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。

いまの職場でできること

1. 福祉用具の導入を、指針を根拠にして相談する

「腰が痛いので」ではなく、「厚生労働省の腰痛予防対策指針では、移乗介助にリフト等の使用を求めています」と伝えると、話の性質が変わります。個人の訴えではなく、労働衛生の課題として扱われます。

2. スライディングシート・ボードから始める

リフトの導入は費用も設置場所も必要ですが、スライディングシートやスライディングボードは比較的導入しやすい用具です。ベッド上での移動や、ベッドと車いすの間の移乗で負担を減らせます。

3. 記録を残す

いつから、どの作業で、どのくらい痛むのか。受診したなら診断書も保管してください。配置転換を相談するときにも、後述する制度を使うときにも材料になります。

4. 業務内容の変更を相談する

入浴介助や移乗の多い担当から外してもらう、フロアを変えてもらう。事業主には労働者の健康に配慮する義務があります。

受診の記録は、残しておいてください

痛みを我慢して受診しないままにしている方は少なくありません。ですが、記録がないと配置転換を相談するときにも、業務内容の見直しを求めるときにも、根拠を示せません。

いつから、どの作業で、どのくらい痛むのか。受診したなら、その記録も残しておいてください。これはあなたの体を守るための材料であると同時に、職場に働きかけるための材料にもなります。

【採用する側から見た】腰を守れる職場の見分け方

介護現場と採用の両方を経験したキャリアアドバイザーの視点でお伝えします。求人票からは読み取れない部分なので、見学と面接で確認してください。

確認すること安心できる答え・様子気をつけたい答え・様子
移乗介助にリフトやスライディングシートを使っていますか使用している。実物を見せてもらえる「基本は人力です」「あるけど使っていません」
用具は何台あって、どこに置いていますか台数と設置場所が具体的倉庫にしまわれている
移乗は何人で行いますか2人介助の基準が決まっている「その時いる人数で」
腰痛予防の研修はありますか実施している実施していない
腰を痛めた職員への対応配置転換の実績がある「辞めていきましたね」

用具があるかどうかより、日常的に使われているかどうかが本質です。「導入しています」と言われたら、「実際にどの場面で使っていますか」と重ねて聞いてみてください。

身体負担の少ない働き方という選択肢

介護の中でも、身体的な負担は形態によって大きく変わります。

  • デイサービス:日勤中心で夜勤がなく、自立度の高い利用者さんが多い傾向があります
  • グループホーム:少人数で、生活支援の比重が高い傾向があります
  • 訪問介護:1対1で自分のペースを保ちやすい一方、環境が家庭ごとに異なります
  • 生活相談員・介護事務:身体介助から離れつつ、経験を活かせます

※いずれも傾向であり、同じ形態でも事業所によって状況は異なります。

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まとめ

  • 国の指針は、移乗介助についてリフト等の使用を求め、人力による抱え上げは原則行わせないとしています。腰痛は根性の問題ではありません。
  • 保健衛生業の腰痛発生率は0.25で全業種平均0.1を大幅に上回り、平成5年以降増加を続けています
  • しびれ・脱力・排尿排便の違和感があるときは、早めに整形外科を受診してください。
  • 職場には、指針を根拠に福祉用具の導入や業務変更を相談できます。記録と受診の記録を残してください。
  • 職場を選ぶときは、用具が「あるか」ではなく「日常的に使われているか」を確認してください。
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よくある質問

介護をしていれば腰痛になるのは仕方ないのでしょうか?
国の方針は異なります。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月改訂)では、腰部に著しく負担がかかる移乗介助等について、リフト等の福祉用具を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱え上げは行わせないとされています。この改訂で適用範囲は福祉・医療分野の介護・看護作業全般に広げられました。抱え上げを前提に業務が組まれている職場は、指針が想定している形になっていないということです。
介護職の腰痛は、他の仕事と比べて多いのですか?
社会福祉施設や医療保健業を含む保健衛生業の腰痛発生率(死傷年千人率)は0.25で、全業種平均の0.1を大幅に上回っています。また、職場の腰痛発生件数は昭和53年をピークに長期的には減少したものの、保健衛生業では集計を開始した平成5年以降、増加を続けています。個人の体力の問題ではなく、作業のやり方の問題として扱われるべき数字です。
どのような症状が出たら受診したほうがいいですか?
痛みで夜中に目が覚める、足のしびれや力が入りにくい感じがある、コルセットなしでは勤務できない、痛み止めを常用している、座っていても立っていてもつらい、といった状態が続く場合は受診をご検討ください。とくに、しびれや脱力、排尿・排便の違和感がある場合は早めに整形外科にご相談ください。腰の負担だけでは説明できない状態のことがあります。
職場に福祉用具の導入を相談するとき、どう伝えればいいですか?
「腰が痛いので」という個人の訴えではなく、「厚生労働省の腰痛予防対策指針では、移乗介助にリフト等の使用を求めています」と制度を根拠にして伝えると、労働衛生の課題として扱われやすくなります。リフトは費用や設置場所が必要ですが、スライディングシートやスライディングボードは比較的導入しやすい用具です。あわせて、いつからどの作業で痛むかの記録と、受診したなら診断書を残しておいてください。
腰痛があることを、転職の面接で伝えたほうがいいですか?
伝えることをおすすめします。隠して入職すると、結局は同じ介助方法の職場で同じことを繰り返すことになりかねません。伝え方としては、「腰痛があるので負担の軽い仕事を」ではなく、「移乗介助でリフトやスライディングシートを使われているか確認したい」という形で、体制についての質問として聞くほうが具体的です。福祉用具の導入状況を条件にすることは、厚生労働省の腰痛予防対策指針に沿った正当な基準です。

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